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チャーチオルガンスタッフブログ
志村拓生先生インタビュー⑤
―先生は、"バッハ オルガン小曲集 演奏と解釈"を出版されましたね。仕事柄、いろんな教会や個人宅に行きますが、この本、あちこちで見ます。
この本が出版されてもう18年になります。バッハのオルガン小曲集(オルゲルビュッヒライン)は、特にプロテスタント教会の礼拝の前奏に相応しい。先ず、曲が長くない、賛美歌と結びついている、そして日本の賛美歌で使われている曲が多い。このバッハの小曲集はいろんな人に影響を与えている。ロマン派のレーガーであるとか、特に近現代のドイツで礼拝用に弾かれる曲や、賛美歌の前奏のヒントにもなっている。そこで、是非ともこの小曲集のガイドになるようなものがあると良いと思い書いたわけで、皆さんに使ってもらっています。
この本が出版されてもう18年になります。バッハのオルガン小曲集(オルゲルビュッヒライン)は、特にプロテスタント教会の礼拝の前奏に相応しい。先ず、曲が長くない、賛美歌と結びついている、そして日本の賛美歌で使われている曲が多い。このバッハの小曲集はいろんな人に影響を与えている。ロマン派のレーガーであるとか、特に近現代のドイツで礼拝用に弾かれる曲や、賛美歌の前奏のヒントにもなっている。そこで、是非ともこの小曲集のガイドになるようなものがあると良いと思い書いたわけで、皆さんに使ってもらっています。
また、この曲集の研究書というものが、たくさん出ているわけですが、その中の「Orgelbuchlein」(オルガン小曲集のドイツ語の研究書)の本を、今、生徒と一緒に購読していて、そこには成り立ちや歴史が書かれており、私たちの大事な指針になっている。
バッハ自身はこの小曲集を「初心者のペダル(足鍵盤)習得を目的とする練習曲」としています。でも、バッハが作曲に夢中になると、初心者のことから離れ、短いけれど、実に内容の豊かなものに仕上げています。それでも、この曲集は「ペダルをどうしたら上手に弾けるか」という、初心者がペダル奏法を習得できるように作られています。
―練習曲なのに充実していて内容が深いですよね、何度弾いても感動と発見がある。
その通り!だから、私はあなた達の大学時代に、この小曲集の全曲を強いてやらせましたよね(笑)、この曲集は頭で考えるだけでなくて、実際にオルガンに向かって体験しなければ分からないことが多い。オルガニストが絶対に習得しなければならない曲集です。また教会暦に沿って作られているので、「礼拝の奏楽の選曲で困ったらオルゲルビュッヒライン」だよねと言っています(笑)。
この本を改訂しようとも思いましたけれど、これはこれで完結したものとして是非使って欲しいと思います。ペダル使い、ストップの組合せ例、元になった賛美歌も参考になると思います。
―本当にありがたい本を書いてくださいました!
そこでこの小曲集を練習する上で、ヨハネスの2段鍵盤は、この小曲集を弾くための充分な内容のストップを備えており、オルゲルビュッヒラインを弾くには、実に相応しい楽器といえます。それなのにオルガンを入れても、足鍵盤の上に板を置いてペダルを使えないようにしている教会がある。せっかくペダル付きのオルガンを買ったのに本当にもったいない。
―そうそう、そうしている教会や個人宅に何度も遭遇、私は少しでもいいから使ってくださいと頭を下げて懇願して来ます。(笑)
(続く)
志村拓生先生インタビュー④
―日本の教会での賛美歌伴奏の現状は?
私が継続している仕事で、賛美歌の伴奏譜出版があります。教会では、礼拝における会衆の賛美、それを支える賛美歌伴奏はとても大事です。先ほど話したオランダでは、ある時期から会衆が歌う賛美歌の伴奏にオルガンを使うようになってきて、賛美歌伴奏用の楽譜がたくさん出版されているのです。
私がアムステルダムに行ったとき、コンセルトヘボウの隣の楽譜屋さんで10キロも賛美歌伴奏の楽譜を買い込み、空港で超過荷物・・・、この時は係員が、楽譜を機内持ち込みのカバンに入れるように勧めてくれ、助かりましたけれども(笑)。そんなわけで、オランダでは賛美歌用の伴奏譜がおびただしい数、出版されているのです。これはとても興味深いことで、主体となっているのがジュネーブ詩篇歌なのです。
《ここで先生が出版された"讃美歌21による賛美歌伴奏曲集"を見せていただきながら》
私が継続している仕事で、賛美歌の伴奏譜出版があります。教会では、礼拝における会衆の賛美、それを支える賛美歌伴奏はとても大事です。先ほど話したオランダでは、ある時期から会衆が歌う賛美歌の伴奏にオルガンを使うようになってきて、賛美歌伴奏用の楽譜がたくさん出版されているのです。
私がアムステルダムに行ったとき、コンセルトヘボウの隣の楽譜屋さんで10キロも賛美歌伴奏の楽譜を買い込み、空港で超過荷物・・・、この時は係員が、楽譜を機内持ち込みのカバンに入れるように勧めてくれ、助かりましたけれども(笑)。そんなわけで、オランダでは賛美歌用の伴奏譜がおびただしい数、出版されているのです。これはとても興味深いことで、主体となっているのがジュネーブ詩篇歌なのです。
《ここで先生が出版された"讃美歌21による賛美歌伴奏曲集"を見せていただきながら》
これは一つの賛美歌に対して、前奏と各種の伴奏を付けるというもので全10巻を出版する予定で現在7巻まで出版されています。やはりオランダの賛美歌伴奏の仕方に刺激を受けましたね。日本では賛美歌を譜面通り弾かなければいけないという妙な迷信があります。でも、もっと礼拝を豊かにするために伴奏の仕方を考えても良いと思うのです。このことは楽器から刺激を受けることもあるわけで、楽器の特性や音色から、また、賛美歌のスタイルに合わせた伴奏譜を作りたいという意欲が涌いてきました。実は賛美歌を譜面通り弾くのは難しいが、著作権の関係で譜面を変更することは出来ないという事情もあり、このことでオルガニストの負担が大きくなっている場合もあります。そこで、著作権を獲得して、もっと易しくした伴奏譜で日本のオルガニストが楽に伴奏出来ることを考えたわけです。
―オルガンを習うことについて、考えをお聞かせ下さい。
さて、ここで大事になってくるのは、正しいオルガン教育。そもそも、オルガンを自分だけで勉強するのは難しいことですから。オルガンは長い歴史もあり、自分だけで習得出来るほど簡単ではない。そのために、オルガンを勉強する良い場所、教えてもらえる先生、これからはそこが重要になってくると思います。カワイはオルガンを販売するだけでなく、教える場所を提供することも必要になってくるでしょう。
―痛いところを突かれました!実は、今まさにその重要性を感じており、カワイとして動き始めなければならないと思います。
少人数でもよいから、どのようにオルガンを使うのか教える施設が絶対に必要で、楽器を販売することと合わせて、教育する施設を提供することを是非ともお願いしたいと思います。ヨハネスはそれだけの中身を持ったオルガンで、しかも、一人で習得出来るほど簡単な楽器ではないと思います。
(続く)
志村拓生先生インタビュー③
―オルガンという言葉の本当の意味についてお聞かせください。
Organという言葉は、はじめ「道具」という意味をもち、次の段階として「楽器全般」を指すようになりました。そして、特定の楽器としての「オルガン」の意味をもつようになった。そこで私が思うに、パイプオルガンだから、特別の価値があるのではない、パイプオルガンは「道具」にすぎない。日本ではパイプオルガンだから価値があると思われているが、そうではなく、人間が関わって演奏されることで、そのものの価値が生まれてくる。ですから、パイプオルガンでなければならないという考えは間違っている気がする。だから、電子オルガンでも、それが有効に弾かれれば大いに価値があるといえます。
オルガンは大きく、「教会で使われるもの、公のホールなどで用いられるもの」と「個人の所有、練習のためのオルガン」と2つに分けられる。バッハの時代、オルガニストはオルガンを練習するためには、教会に行かなければならなかった。当時は、モーターを入れれば音が鳴るわけではなく、鞴(ふいご)を踏む人にお金を払わなければならず、教会で練習することも、ままならなかった。それで、練習するときは、自宅で、ペダル(足鍵盤)付きチェンバロとか、ペダル付きクラヴィコードを備え付けて、オルガンの練習をしたのです。
教会にパイプオルガンが設置されていても、自宅で練習するときは、ペダル付き電子オルガンを用います。ここに、電子オルガンを所有する意味があります。電子オルガンは小型だけど、いろいろなスタイルで弾くことが出来ます。
―今回新たにStudio 350をご購入されましたが、如何ですか?
私は自宅で演奏会の練習や、教会での奏楽のため、また、生徒を教えるために有効に使わせてもらっていますが、前の楽器がカワイということもあり、今回、ヨハネスの3段鍵盤を選びました(スタジオ350)。私はオルガンを選ぶ際、3段鍵盤の楽器が必要だと思っています。
フランスのバロックや近代の音楽を弾こうとする時、2段鍵盤では弾けない。そして3段鍵盤の各々は、独自の要素を持っていなければいけないと思います。主鍵盤の働き、ポジティフとしての性格、将来スウェルに発展するレシとしての性格を持っていることが大きな意味があると思います。そういうわけで、私としてはヨハネスの3段鍵盤を使っています。
(続く)
志村拓生先生インタビュー②
―先生の生い立ちとオルガンとの出会いは?
岐阜県の山中、鉄道もない神岡という町で、牧師の家庭に生まれ、子供の頃からリードオルガンが身近にありました。昭和23年の小学生の頃、父親の転勤で、八王子に移り、教会にはリードオルガンがありましたが、パイプオルガンを勉強したくて、奥田耕天先生に習いに行きました。昭和30年代、当時ペダル(足鍵盤)付きのパイプオルガンは東京に5台くらいしかなかった。それで、ペダルの練習をどうしたかというと、父が米軍の牧師と関係があり、そこにハモンドオルガンがあって練習させてもらい、ペダルに慣れる基礎の訓練となりました。そして米軍施設の神奈川の通信隊の教会オルガニストを10年務め、武蔵野音大に入学したわけです。
音大に入った当時、先輩は2人だけ。そして音大に入った翌年、ベートーベン・ホールにドイツのクライス社のオルガン(4段鍵盤、55ストップ)が設置され、とてもタイミングが良かったと思いました。練習室にはヴァルカー社の11ストップのオルガンがありました。それから、講師を経て、ドイツ・デットモルトの音楽大学教会音楽科に留学しました。最初の1年分くらいのお金しかない当時、4年にわたり教会当局からの支援がありました。1972年に日本に帰ってきて、武蔵野音大で教えるようになり、しばらくして、あなた達が生徒として入ってきたわけですね・・・
―ヨハネスオルガンをどのように評価されていますか?
日本の教会は貧しい、また、教会員の老齢化もあり、一般の教会でパイプオルガンを買うという、経済的ゆとりはない。これからの時代の教会と楽器、礼拝に使う楽器を考えるときに、必ずしも、パイプオルガンでなければならないという事はなくなると思います。ピアノが設置されるところもあるだろうし、ゴスペルを歌う教会では、それに合う楽器が選ばれるだろうし、これからは、教会には、良い音響の良い電子オルガンが入ってくることになるのではないかと思います。先ほど話したように、オランダのヨハネスオルガンは教会の賛美歌の伴奏に結びついているわけで、教会に導入されることは望ましいと考えます。
もう一つ、この頃の傾向として、教会とは関係なく、オルガン愛好家が増えていて、オルガンが必ずしも教会の楽器ではなくなってきています。古楽も盛んになってきて、昔の音楽を楽しむようになってきました。その中でオルガン音楽の分野は大きいし、バッハはおびただしい数の質の高い曲を書いている。そこで、オルガンを楽しみたい人が家庭で弾けるようになるために、少し贅沢に言うならば、小さなオルガンではなくて、いろいろなスタイルの曲が弾けて、特色を持った3段鍵盤のオルガンが設置されると、私としては嬉しいですね。また、オルガンを演奏する人が増えることも。
―最近、自宅用にオルガンを買われる方が増えて、納品に立ち会うと、そこでレジストレーションのやり方を聞かれ、ついでに「何種類かメモリーに入れておいていただけます?」、なんてことに(笑)。そこで、”オルガンを始めたきっかけは?”と聞くと、”コンサートホールで聴いて、弾きたくなった”という人がとても多い。つまり教会とは関係ない人たちがオルガンに興味を持ってきている。大学の社会人枠のオルガンコースもあり、こういった方々が逆に「教会に行ってみようかしら」、なんてこともあります・・・
そう、昔は「オルガンがあるから教会に行ってみようか」だったのに(笑)。
(続く)